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2003年3月 9日 (日)

娘道成寺

http://www.netlaputa.ne.jp/~AKITSUKI/Kabuki/buyou/doujyouji.html

今晩、はじめて市川崑監督の「娘道成寺」という作品を見た。
 
道成寺といえば、『鐘に恨みは数々ござる』と始まる長唄でお馴染みの、安珍・清姫の霊異の恋の物語である。 しかし、この映像作品は市川崑の新解釈によるものとの字幕解説があり、おもわずこのモノクロ画面の操り人形劇にTVのチャンネルを固定してしまった。

 書き割りの、山寺に登る長い石階段に桜の花びらが舞い散るカットからこの映画は始まっている。 物語の狂言回しはヒョウキンな表情をした寺の小僧達である。

鐘造りの若者が思い悩んでいる。 
 鋳かけた大鐘が仕上がりの前に割れてしまい、幾度試みても依頼された鐘が出来上がらないのだ。 新築の鐘楼は既に完成しており、皆は鐘の出来上がるのを千秋の思いで待ちわびている。
 思い余って願をかける観音菩薩と、それを見守り、密かに若者に思いをよせる村娘の姿とが、操り人形の糸のもつれる有様さへも計算されているかのように、決して互いに触れ合うことのない画像を重ねてゆく。

 若者の祈願する姿を見つめる娘。 やがて、観音菩薩の前に同じ願を重ねる村娘の姿が映し出される。

 いかなる祈りが通じたものか、ある満月の夜、いづこともなく飛来した何者かが鋳型の炉に飛込む。 それを目撃した若者は今度こそ大鐘が鋳あがることを確信する。
 予想どおり見事に出来上がった鐘は真新しい鐘楼に下げられ、晴れの日を迎えた寺の僧がこれを撞く。 しかしこれはどうしたことか、この見事な鐘はなんとも音色が冴えない。 参集した村人達は皆、驚き怪しむ。
 ふと思いついた若者は自分の手で鐘を撞いてみる。 手のひらを反したように鐘は見事な余韻を響かせて四方の里の村々に落成の喜びを伝える。
 若者が怪しみ探してみれば、自分が願をかけた観音菩薩の前にあの村娘は祈る姿のまま息絶えていたのであった。

恋の手習い つい見習いて
  誰に見しょとて 紅鉄漿つきょぞ
    みんな主への心中だて

 余談だが、道成寺は白蛇伝の日本版だとも言われている。

 能舞台などで見る道成寺では最後の場面の「鐘入り」によって、清姫である蛇が鐘にまきついて中に隠れた安珍を焼き殺すという激しい展開となっている。

この大元となった中国の白蛇伝は 元は霊異の物語である。

 峨媚山の白蛇姫、白夫人(近代京劇での名は白素貞)は小青という娘(実は青蛇)を従え、人間の娘の姿を借りて人の世界に紛れ込む。 白素貞はやがて許仙という男に恋し、結婚して幸せな日々を送る。
 しかし、幸福な日は長く続かない。 偶然に出会った高僧・法海和尚が白素貞の正体を見破り、仕向けて端午の節句の祝い酒を白素亭に飲まる。 酔った白素貞は白蛇の正体を現し、それを目の当たりにした許仙は悲嘆と衝撃の余りに死んでしまう。 その命を取り戻す為に白素貞は命をかけて蓬莱山の百年に一輪しか咲かない蘇生花を取りに行く。
 この霊薬のお陰で生き返った許仙は自分を救った白素貞が蛇である事を怖れ、除霊師、法海 許仙を連れ戻す為に白素貞は金山寺へ向かうが、和尚は法力でこれを阻み、怒り狂う白素貞はあらゆる精霊たちを集めて金山寺を攻め立てた為、おびただしい修行僧や村人達の命が奪われる。
 
 近代化された白蛇伝の物語では、たとへ蛇妖怪であってもやはり白素亭が恋しいと気付いた許仙が、金山寺を抜け出して白素亭の元へと走る事によって終わる。
 しかし、この古い物語にはその歴史に相応しい種種のバリエーションが伝えられている。 許仙は法海に弟子入りし、出家。 数年後に座禅したまま大往生するという組み立てのものが原型に近いと思われるが、これは日本に伝来した「案珍・清姫」の道成寺の形とも異なっている。

当時の観客は市川崑監督の「娘道成寺」の中に何を見ただろうか。
 1947年 新東宝教育映画作品軍の慰問用の発注 GHQの検閲の結果、未発表となった作品であったとの事である。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/sakuhinex.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/sakuhin16.htm
http://www.jks.jp/white.htm
2003.03.09

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